双極性障害(躁うつ病)かどうかを診断するには?

風邪を引いた時病院に行くと、聴診器を胸にあてられたり、喉の腫れをチェックされたりします。

また、骨折をした時病院に行くと、レントゲンを撮られます。

それらの検査で異常がある場合、風邪ですねとか、骨が折れていますなどと診断をされます。

このように一般的な病気や怪我は目に見えて、異常がわかります。

それにひきかえ双極性障害は、目に見える異常が存在しません。

MRIやCTを撮って脳を確認しても、基本的に何も異常は発見されないのです。

では、どのようにして、「双極性障害(躁うつ病)である」という診断を行うのでしょうか。

本記事では双極性障害(躁うつ病)かどうかをどのように診断していくのかについてご紹介していきます。

双極性障害(躁うつ病)の典型的な症状とは?

双極性障害は、気分が高まったり落ち込んだりと、躁状態とうつ状態という両極端な状態を繰り返す脳の病気です。

気分が高まる躁状態の程度で、「双極性障害1型」と「双極性障害2型」の二種類に分類されます。

まず、全財産をギャンブルにつぎ込んでしまうほどの散財をしたり、暴れて警察沙汰になってしまったりして、社会的・経済的なダメージが大きい「躁状態」を経験するのが双極性障害I型です。

また、いつもよりハイテンションで、睡眠時間も短くなり、派手目な洋服で外出したりして、社会的・経済的なダメージは少ないものの気分が高くなる「軽躁状態」を経験するのが双極性障害Ⅱ型になります。

そしてそれら2つに共通して躁状態の後に「うつ状態」が症状としてやってきます。

うつ状態になると、睡眠障害が起き、食欲も減退もしくは亢進し、今まで興味を持っていた趣味やテレビなどの関心が薄くなったり、ひどい時には体が動かず、一日中寝たきりになってしまったりします。

双極性障害I型の方が、躁状態の時にしてしまうダメージが大きいため、双極性障害Ⅱ型よりも重症であると考えられがちですが、一概にそうとも言えません。

Ⅱ型の方が、うつ状態のコントロールが難しいと言われており、どちらの方が厄介なのかは、なんとも判断ができないようです。

双極性障害(躁うつ病)は診断が難しい

前述したように「双極性障害である」という診断するための検査は今の所ありません。

あるとしても光トポグラフィーという検査で、その精度はまだまだ低いものとなります。

では、どうやって医者は診断をしているかというと、患者への問診から診断をしているのです。

患者の話と、現在の精神病診断基準となっているDSM-5というものを照らし合わせて、双極性障害かどうかを判断しています。

病気や怪我のように目に見える異常からではなく問診による診断であるため、その分精度も悪くなります。

そのため双極性障害Ⅱ型の方の場合、うつ病と誤診されやすいということが問題視されています。

双極性障害I型の場合は、入院が必要になるほどの躁状態を経験しますのでわかりやすく、診断でも双極性障害と正しくつけられやすいです。

しかし双極性障害Ⅱ型の場合は、軽躁状態であり変化が小さいため見過ごされやすく、初診でうつ病など双極性障害以外の診断名がつくことが多く見受けられます。

双極性障害とうつ病などその他の病気では、治療薬の種類が大きく異なります。

双極性障害の人にうつ病の薬を与えていては、ちっとも状態が良くならないだけではなく、いきなり躁状態になってしまう躁状態に転じてしまったり、年に4回以上もの躁とうつを繰り返すラピッドサイクルを助長してしまったりすることがあります。

そのため、双極性障害であるというより正しい診断を下すことは薬は今後大きな課題になってくるでしょう。

双極性障害は診断基準DSM-5で診断される

一般的に双極性障害であるという診断基準になっているDSM-5とはDiagnostic and Statistical Manual of Mental Disordersの略称で、日本語訳すると、精神障害の診断と統計マニュアルです。

これはアメリカ精神医学会によって出版された書物であり、精神病を診断するときの診断基準として主に用いられています。

操作的診断基準といって、原因不明で検査もないような病に多く使われる基準に則っており、あるポイントに当てはまるか否かを問診などにより診断していきます。

なぜその精神病になったのかという経緯は全く見ず、どんな症状が起きているのか、どんな状態にあるのかを基準とするのが最大の特徴です。

このような客観的な基準があることによって、医者によって診断がばらついてしまうというようなことを避けることができます。

躁病エピソードとは?

DSM-5では躁病エピソードについて以下のように記載があります。

A 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも一週間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。
B 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つまたはそれ以上が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。

    1. 自尊心の肥大、または誇大
    2. 睡眠欲求の減少(例・3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
    3. 普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
    4. 観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
    5. 注意散漫が報告される、または観察される
    6. 目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥
    7. 困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例・制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)
C この気分の障害は、社会的にまたは職業的機能に著しい障害を引き起こしている、あるいは自分自身または他人に害を及ぼすことを防ぐため入院が必要であるほど重篤である、または精神病性の特徴を伴う
D 本エピソードは、物質の生理学的作用または他の医学的疾患によるものではない。

 

軽躁病エピソードとは?

DSM-5では軽躁病エピソードについて以下のように記載があります。

A 気分が異常かつ持続的に高揚し、開放的または易怒的となる。加えて、異常にかつ持続的に亢進した目標指向性の活動または活力がある。このような普段とは異なる期間が、少なくとも4日間、ほぼ毎日、1日の大半において持続する。
B 気分が障害され、活動または活力が亢進した期間中、以下の症状のうち3つまたはそれ以上が有意の差をもつほどに示され、普段の行動とは明らかに異なった変化を象徴している。

  1. 自尊心の肥大、または誇大
  2. 睡眠欲求の減少(例・3時間眠っただけで十分な休息がとれたと感じる)
  3. 普段より多弁であるか、しゃべり続けようとする切迫感
  4. 観念奔逸、またはいくつもの考えがせめぎ合っているといった主観的な体験
  5. 注意散漫が報告される、または観察される
  6. 目標指向性の活動(社会的、職場または学校内、性的のいずれか)の増加、または精神運動焦燥
  7. 困った結果につながる可能性が高い活動に熱中すること(例・制御のきかない買いあさり、性的無分別、またはばかげた事業への投資などに専念すること)
C 本エピソード中は、症状のないときのその人固有のものではないような、疑う余地のない機能の変化と関連する。
D 気分の障害や機能の変化は、他者から観察可能である。
E 本エピソードは、社会的または職業的機能に著しい障害を引き起こしたり、または入院を必要とするほど重篤ではない。もし精神病性の特徴を伴えば、定義上、そのエピソードは躁病エピソードとなる。
F 本エピソードは、物質の生理学的作用または他の医学的疾患によるものではない。

 

抑うつエピソードとは?

DSM-5では抑うつエピソードについて以下のように記載があります。

A 以下の症状のうち5つ(またはそれ以上)が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こしている。これらの症状のうち少なくとも1つは、(1)抑うつ気分、または(2)興味または喜びの喪失である。

  1. その人自身の言葉(例・悲しみ、空虚感、または絶望感を感じる)か、他者の観察(例・涙を流しているように見える)によって示される、ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分。
  2. ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動における興味または喜びの著しい減退。
  3. 食事療法をしていないのに、有意の体重減少、または体重増加、またはほとんど毎日の食欲の減退または増加。
  4. ほとんど毎日の不眠または過眠。
  5. ほとんど毎日の精神運動焦燥または制止。
  6. ほとんど毎日の疲労感、または気力の減退。
  7. ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪悪感。
  8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日認められる。
  9. 死についての反復思考。特別な計画はないが反復的な自殺念慮、または自殺企画、または自殺するためのはっきりとした計画。
B その症状は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
C そのエピソードは、物質の生理学的作用または他の医学的疾患によるものではない。

実際どんな風に双極性障害と診断されたのか?

僕が双極性障害と診断されたのは、社会人2年目、某カード会社に勤め、北海道で働いていた時でした。

入社してすぐ、育成担当者からのいじめを受け、うつ状態になって休職した末の復職後に躁状態になってしまいました。

万能感、多弁、浪費、観念奔逸(かんねんほんいつ)などの症状がみられ、会社の上司に連れられて、かかりつけの精神科医のところへ行き、その場で再度の休職となりました。

かかりつけの医者は僕のうつ状態も過去に診ているので、躁状態の時との変化がわかりやすかったのだと思います。

また、僕の場合は双極性障害I型だったので、躁状態の症状が激しく、判断しやすかったのだと思います。

躁状態で休職をした後、また職場に復帰したのですが、結局その後も体調が優れず某カード会社を退職セざるを得ませんでした。

その後、東京の父親のところへ戻って療養している時に、念のためということで東京大学の「心の検査入院」をしました。

三日間にわたって、MRI、CT、光ポトグラフィー、血液検査、心理検査などなど様々な検査をされ、何度もいろんなことを問診された結果、やはり双極性障害という診断で病名が確定しました。

まつらの半生でも綴っていますが、自分が精神病になるということはとてもショックが大きく、認めたくない事実でした。

そのため、双極性障害がほぼ確定した後も、薬を飲むことを避けていた時期もありました。

実際に「双極性障害」という診断が下ったから安心、というわけではないのです。

正しい診断が下って、自分も周りの人もそれを受け入れて、正しい知識の元に再発予防をしていく体制が整って初めて闘病がスタートと言えると僕は思います。

まとめ

双極性障害は、原因が不明なため、診断するための検査が存在しません。

だからこそ、医者との問診によって診断をすることになります。

そのため、患者の方の問診内容次第で、双極性障害なのにうつ病など他の病と誤診されてしまうことがあるのです。

双極性障害とその他の精神病では用いられる薬がまったく変わってきます。

双極性障害I型では明らかな躁状態を経験するため、誤診されづらくはなりますが、双極性障害Ⅱ型は軽装状態と言って、躁状態であるかどうかの判断がしづらく、うつ病などと診断されやすいと言われています。

うつ病と診断されたら、心のどこかで少しだけ、双極性障害も疑ってみるといいかもしれません。

まず大切なことは、正しい診断です。

日々の活動をしっかり観察し、問診の時に正しく伝える必要があります。

そして、正しい診断が下った後に大切なのは、診断を受け入れることと、自分で自分の病気の知識をつけることです。

うつ病であれば、治って薬を飲まなくてすむようになることもあり得ますが、双極性障害は一生完治しないとされています。

そのため双極性障害と診断された場合には、薬を飲み続けながら、「寛解(かんかい)」といって、いい状態を続けられている状態を目指す治療を行っていくことになります。

確かに、自分が精神病になってしまった時のショックは計り知れないものがあります。

しかし、きちんと受け入れて、病気の知識もつけて、薬を飲んでいけば、普通と変わらない生活ができるのです。僕も今現在薬を飲みながら、徐々に「寛解(かんかい)」を続けられるようになってきています。

双極性障害と診断された場合、精神的に辛いかもしれませんが、まずはそれを受け入れて、今自分自身でできる最大の治療を精一杯行っていくことが大切だと僕は思います。

一緒に頑張りましょう!