双極性障害は気分障害に分類される精神疾患の一つです。
躁うつ病とも呼ばれます。
発症する年齢の平均は25歳で、世界中に6000万人くらいの患者がいるとされています。
欧米での発病率は2〜3%、日本では0.7%くらいの発病率と言われています。
しかし、日本では双極性障害(躁うつ病)に関する本格的な調査が行われておらず、実際にどれくらいの患者がいるのかははっきりわかっていません。
そのため、社会的な認知度も低く、それが逆に双極性障害(躁うつ病)の方を苦しめる社会を作り出してしまっているのが現実です。
本記事では、双極性障害(躁うつ病)とはいったい、どのような病気なのかについてご紹介いたします。
目次
双極性障害って一体どんな病気?
双極性障害は気分が高まったり落ち込んだりするうつ状態と、頭がフル回転し、トランス状態になる躁状態という両極端な状態を繰り返す脳の病気です。
うつ状態では、一日中ゆううつな気分で、眠れなくなったり、または逆に眠りすぎたりします。
大好きだった趣味やテレビ番組などにも関心がなくなったり、食欲が低下したり、おっくうで身体を動かすことができないといった症状がみられます。
一方、躁状態では、頭がフル回転し、異常な行動をしてしまったり、自分はなんでもできてしまうといった感覚に陥ってしまうといった症状がみられます。
躁状態には「躁状態」と「軽躁状態」2種類が存在し、どちらの躁状態がみられるかで病名が変わってきます。
「躁状態」とは家庭や仕事に重大な支障をきたすような行動をしてまったり、人生に大きな傷跡を残してしまいかねないため入院が必要になるほどの激しいトランス状態です。
一方で「軽躁状態」とは、はたから見ても明らかに気分が高揚していて、眠らなくても平気で、ふだんより調子がよく、仕事もはかどるけれど、本人も周囲の人もそれほどは困らない程度の状態です。
激しい躁状態とうつ状態がみられる場合は「双極性障害Ⅰ型」、軽躁状態とうつ状態がみられる場合は「双極性障害Ⅱ型」と診断されます。
躁状態と聞くと少しイメージしにくいかと思いますが、わかりやすく言うと、お笑い芸人の鳥居みゆきさんの「ヒット・エンド・ラン」というギャグや、サンシャイン池崎さんの超ハイテンション自己紹介を、日常生活でも行ってしまうような状態です。
「お酒に酔っているのか?」「何かいいことでもあったのか?」と周りが不審がるような態度を見せることが躁状態の特徴と言えるでしょう。
うつ病との違い
双極性障害のうつ状態とうつ病のうつ状態は、症状が酷似しているため、うつ病と診断された人が実は双極性障害だったというケースが多く存在します。
特に海外ではうつ病の症状で受診した患者さんの16%が双極性障害だったという報告がある程です。
現在のところ、双極性障害もうつ病も原因が完全に解明されていないことから、正確な検査方法はまだ開発されておらず、多くの医者は患者からの話でこれら病気の診断を行なっています。
そのため、診断時には、患者が医者に通院の経緯をきちんと話すことがとても重要になります。
特に双極性障害Ⅱ型では双極性障害Ⅰ型ほど大きな躁状態にはならないので、双極性障害Ⅱ型のうつ状態とうつ病のうつ状態を混同してしまいがちです。
また、双極性障害とうつ病は飲む薬が全く異なります。
うつ病と誤診され、うつ病の薬を飲んでいたところ、うつ状態が治らないどころか躁状態に転じてしまった(躁転した)というケースもあります。
特に三環系抗うつ薬と呼ばれる古いタイプの抗うつ薬では、躁転のほかに、1年のうちに4回以上も躁状態とうつ状態を繰り返す急速交代化(ラピッドサイクリング)を誘発してしまうことがあるので、注意が必要です。
非常に診断が難しい病気の一つなので、正しい診断と、それに伴う正しい服薬は非常に重要であると言えるでしょう。
双極性障害には躁状態の程度によって2種類に分類される
先ほど簡単にご説明した通り、双極性障害にはⅠ型と、Ⅱ型が存在し、躁状態の波の大きさによって区別されます。
明確な基準が定義されているわけではなく、ざっくりと分けられているといった感じです。
それら2つの治療法はほとんど同じで、主に薬物療法がメインとなり、飲む薬も変わりません。
そして共通して言えることとして、躁状態は、何回か躁状態を経験すれば自分も周りも兆候や傾向が掴めてくるため、社会的・経済的ダメージを軽減することができるようになってきます。
しかし、特に初めて躁状態になった時は、本人はそれが本来の自分だと感じ、周りは対処法もわからず、社会的・経済的ダメージは大きくなりがちです。
さらにそれに伴って、その後にやってくるうつ状態の時の、「自分はなぜあんなことをしてしまったのだろう」という自責の念も大きくなる傾向にあります。
実際にこの自責の念が双極性障害において一番辛いです。
そこで、もし双極性障害の方が身近にいた場合には、当事者と周りの人が異常行動は病気によるものなのだという理解を持ち、いかに再発を防ぐかが大切になってきます。
では、双極性障害1型、2型それぞれどのように違ってくるのかを説明いたします。
双極性障害1型
双極性障害Ⅰ型は、躁状態の波の大きさが2型に比べて大きいものをいいます。
かなり怒りっぽくなり怒鳴り散らしたり、大金を散財したり、暴れてしまい警察沙汰になったりと、社会的・経済的にダメージが大きく、入院を必要とするケースが多いです。
入院はその人の症状を治すためもありますが、その人の行動を制限することで社会的・経済的なダメージを増やさないようにする効果があります。
双極性障害のうつ状態には、「なぜ自分はあんなことをしてしまったのだろうか」という自責の念がつきまといます。
双極性障害Ⅰ型は躁状態の波が大きいことから、この自責の念が強く、苦しみは深くなるのが特徴です。
僕は5年以上、この双極性障害1型の治療を行なっていますが、躁状態になって一番辛いのは症状でも薬物療法でもなく、この自責の念だと感じます。
双極性障害2型
双極性障害Ⅱ型は、躁状態の波の大きさが小さいものをいいます。
いわゆる軽躁状態で、いつもより上機嫌で笑っていたり、鼻歌を歌っていたり、睡眠時間は短くなり、派手な洋服を着て外出したりするのが特徴です。
双極性障害Ⅰ型のように大きなトラブルも起こさず、周囲に迷惑をかけることも少ないです。
そして、自分自身も困っていることが少ないため、躁状態と判断されづらく、うつ病と誤診されるケースが多くみられます。
Ⅰ型よりⅡ型の方が軽い病気とみられがちですが、実はⅡ型の方がコントロールしづらく、うつ状態を再発しやすいといわれています。
双極性障害の主な症状
双極性障害は気分が高まる躁状態と、沈んでしまううつ状態という両極端な気分の波を行き来する病気です。
双極性障害は先ほどご紹介した通り、躁の状態によって二種類に分類されていて、躁状態の波の大きさが大きいⅠ型と、躁状態の波の大きさが小さいⅡ型があります。
前者は、全財産をギャンブルへ突っ込んでしまったり、とても怒りっぽくなったり、暴れてしまって警察沙汰になってしまったりと、社会的・経済的なダメージが大きいものです。
場合によっては入院も必要になってきます。
後者は、いつもよりよく笑って愉快な気持ちになったり、鼻歌を歌い出したり、いつもより浪費をしたり、いつもより派手な格好で街に出かけたりします。
I型ほど目立った躁状態にはならないものです。
そしてこれら2つに共通して、うつ状態はやってきます。
うつ状態では、食欲が低下または亢進したり、睡眠障害が起きたり、今まで楽しんでいた趣味や興味を持って取り組んでいたことに対する意欲が低下して、胸が詰まった苦しい気分になります。
場合によっては、一日中ベッドで寝込んでしまい、活動ができなくなってしまいます。
こういった躁状態、うつ状態が双極性障害の主な症状です。
双極性障害の原因
双極性障害の原因は、未だ解明されておらず、不明です。
一卵性双生児研究からある1つの遺伝子があれば必ず発症するような「遺伝病」ではないことが明らかになっています。
実際、僕の親族にも双極性障害の人はいません。
なぜ僕が双極性障害になったのか、それは原因不明なのです。
双極性障害はまだまだ認知されていない病気
双極性障害はうつ病と違ってまだ、一般的に認知度が高くない病気です。
そのため、認知度の低さから会社には「うつ病」であると偽って治療をしている人もたくさんいらっしゃいます。
双極性障害ということを公表してしまうと、「うつ病」よりも扱いにくいと社会的に思われてしまうことが原因としてあるようです。
僕も人に自分の病気を打ち明ける時、「双極性障害です」というと、相手の頭には「?」が浮かびます。
そこで「躁うつ病です」と言い直すと、「あぁ」となんとなくわかるような顔をされます。
そしてたいていの人に「ハイテンションになったり沈んだりするのでしょう」といわれます。
確かにそうです。
当たってはいるのですが、「ハイテンション」が具体的にどうなるのか、「沈んだり」が具体的にどうなるのかをきちんと理解していたり、症状が悪化していなければ全くもって普通なことを知っていたりする方はなかなかいません。
周りに双極性障害の方がいない上に、双極性障害を偽っている方も多いため、社会的に認知度が低くなってしまうのは仕方のない事だと思います。
中には、気分の波が気持ちによって引き起こされている単なる気分屋の激しいバージョンだと思われている方もいらっしゃるようです。
双極性障害は確かに外的刺激によって誘発されるとは思いますが、脳内伝達物質の均衡が乱れることで状態が変化していく病気なので、単に気性が荒いわけではないことや、躁状態を経験していて、薬をきちんと使っていけば病気をコントロールすることが可能であるということ、そして躁状態になる前には必ず何か引き金となる兆候があって徐々に躁状態になっていくため、突然躁状態にるような怖い存在ではないことなどを僕は説明しています。
相手の方にとっては、初めて出会った人であり、初めて聞いたことなので、わかったようでわかっていないような感じである場合が多いです。
「すんなりとはよく理解できないけれど、そういう人たちもいるのだね」といった感じです。
友人関係などではこの程度の理解で問題ないのですが、仕事関係だとそうはいかないだろうと思います。
薬でコントロールをきちんとしながら、自分も躁状態を経験していてある程度自覚できる状態、かつ、会社のみんながきちんと理解してくれて様子の変化も察知してくれる環境にあれば、双極性障害の人は普通の人と何も変わらずに働いていくことができると思います。
しかし、今の社会はそこまで理解をしてくれてはいません。
そもそも双極性障害を隠さないと生きれない現状が続くかぎりこの認知度の低さを解消することはできないと思います。
僕も過去二回、会社から自主退社を促されて退職をしました。
君が戻ってくる場所はないよ、と言われてしまったのです。
会社の人からみたら、僕はいつ爆発するか分からない爆弾のような存在に見えたのかもしれません。
仮に僕が普通の健常者であったのであれば、僕のような存在が同じ会社にいたら「何をしでかすか分からない」と同じようにすると思いますし、それはある意味仕方のないことなのかもしれません。
だからこそ、そういった社会的に信用を失うことを恐れ、自分が双極性障害だということをクローズにする人が増え、苦しむ人が増えているのだと思います。
しかし、中には僕の友人や僕の活動を支えてくださるパートナーさんのように双極性障害を理解した上で付き合ってくれる方もいらっしゃいます。
きっと今後少しでも双極性障害の認知が進めば、より双極性障害を抱える人にとって生きやすい社会が実現していくと思います。
そういった双極性障害の認知のためにも、こういったブログや、メンタルまつらなどの活動で少しでも認知を広めていければと思っています。